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2008年11月号より

1978年度生 杉山健

慶應義塾高校よりNew York州に留学
慶應義塾大学商学部卒業
MIT Sloan School of Management修了
富士フイルム(株)
経営企画本部第一部長

皆さんがそれぞれの土地で生活を始めてから数ヶ月、漸く色々なことに慣れてきた頃だと思います。クリスマスももう直ぐで、Christmas ballに誰を誘おうかなんて悩みながらも お元気でご活躍のことと思います。

皆さんの旧い先輩としてメッセージを書きます。 私は1978年-79年にNY州北部、Croghanという小さな町の、Beaver River Central Schoolという小さな高校にIFで留学しました。 皆さんがまだ生まれていない、30年も前のことです。

出来たての成田空港からSan Francisco、Detroit、Pittsburg、Rochesterと飛行機を乗り継いで、緊張のため一睡もできず、40時間かけてHost motherが待つSyracuseにへとへとになりながらたどり着いたのを昨日のことのように鮮明に覚えています。それから悪戦苦闘の日々が始まりました。 少しは自信があった英語もなかなか通じず、host familyとのコミュニケーションも一苦労でした。 ですから最初は部屋に閉じこもってひたすら日本の友人に手紙を書くということをしておりました。そのころは今のようにPCやInternetは勿論無く、国際電話も極めて高価な時代でした。ですから日本の家族や友人とのコミュニケーションはひたすら手紙で、沢山書きました。 

人口が600人という本当に小さなコミュニティで、日本人など始めて見たという人たちばかりでしたし、高校の名前からもわかるように、川や沼地にBeaverが棲むような素敵な、でもisolatedな環境でしたから情報もごくごく限られていたので、まさに一人ぼっちでした。

でも、そんな苦しい日々も、少しずつ英語でコミュニケーションが出来るようになって、変わって行きました。特に、ラッキーにもgirlfriendができて、学校で催されるdanceに一緒に行くようになってから留学生活が一変して楽しいものに変わりました。現金なものですね。

留学後のことを少し書きます。大学を米国でということも考えましたが、日本に戻り、大学を卒業して、写真が好きだったので、富士フイルムという会社に就職しました。夢は海外で仕事をすることでしたから、入社後希望して海外マーケティングの部署に配属になりました。 その後会社の留学制度に応募し、MIT(Massachusetts Institute of Technology)のビジネススクールに2年間留学し、経営学修士号を取得しました。帰国後は再び海外マーケティングの仕事、海外広報などを経験し、医療関連システムの欧州マーケティングの責任者として5年間ドイツに赴任しました。 現在は経営企画本部というところで、グローバルベースでの事業戦略立案の仕事をしています。 お分かりのように、これまでの私の軸は常に「海外」であり、すべてはIFの留学で培ったlanguage ability とcommunications skillsが今の私の基礎になっています。 それほど高校留学の10ヶ月は中身の濃いものでしたし、その後の人生に深い影響を及ぼしているのです。

そのころはまだ、自分が将来どうなるかなんてわかりませんでした。 皆さんも、これから自分はどんな人生を歩むのだろうかと、将来への少しの不安と大きな希望が入り混じった不思議な気持ちでおられるのではないかと思います。でも、今ははっきりと言えます。多くの、経験という「点」が将来の自分に向かって一つの「線」につながっていくということ。でもこれは、後で振り返ってみて始めてわかるものなのです。 だから皆さんは今過去を振り返らずに前だけをまっすぐに見て沢山のことを吸収して下さい。日々色々なことが起こるでしょう。 楽しいこと、感激的なことだけで無く、苦しいことや悩ましいことも沢山あると思います。でも全てが何年後かのあなたに繋がって行くんです。 どうか、くじけず、おごらず、貴重な留学の日々を思う存分楽しんで下さい。

最後にちょっと硬い話をします。日本という国はこれから色々と大変なことに直面していくと思います。 皆さんが留学から戻られ、大学に行かれて、社会に出られると、様々な課題や困難にぶつかると思います。 それは個人的なことかもしれないし、社会全体の問題かも知れない。たとえば、これから日本は超高齢化社会を迎え、皆さんが働き盛りとなる2025年には人口の30%が65歳以上になると言われています。また、地球温暖化も待ったなしで考えなければならない問題でしょう。年金や医療費といった問題もありますね。皆さんはいずれこうしたことも社会のリーダーとして考えなければならない立場になると思います。暗くなってしまいますか? でもこれらの問題は世界のどの国も、米国でさえ経験したことのないことで、いち早く日本が直面する課題なのです。 こうしたことに皆さんと、ちょっと先輩である私たちが、海外での経験を活かして一緒になって解決できれば、必ず同じ問題に直面するであろう他の国々に解決策を提示できるようになり、世界に貢献できる。 それは素敵なことだと思いませんか? そんなこともちょっとでいいですから、今考えてみて下さい。 もしかしたらクラスメートと話し合ってみるのも有意義かもしれませんね。

今から何年か後、皆さんが社会に出られて、私たちが皆さんと一緒にこうした課題について議論するようになることを、今から楽しみにしています。 どうかそれまで、いろいろなことを経験して、沢山の「点」を繋ぎ合わせて下さい。応援してますよ。
お元気で、一層のご活躍を!

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