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2023年8月号より

1995年度生 土肥 智雄

私立大谷高校からウィスコンシン州に留学。立命館大学経営学部卒業。
Illinois Tool Works 入社、Ramset&RedHead事業部にてファスニング関連の開発・マーケティングに携わる。 日本パワーファスニング(株)代表取締役を経て、現在は東海パワーテック(株)代表取締役。また国内外の企業と家庭用および産業用蓄電池システムの開発・マーケティングに携わる。


リアルをたのしむ

 今、2022年度生の皆さん、お帰りなさい、そして2023年度生の皆さん、このNEWSLETTERを受け取る頃はまだまだワクワク・ドキドキな頃合いでしょうか。世界の生活を一変したコロナウィルスによる影響もいまだあるなかで、また、地域によっては戦争や貧困など様々問題があるなかで、日本をとびだし交換留学生として違う文化を経験する勇気、とても素晴らしいことだと思います。

 私がIF生としてWisconsinで過ごした時期はちょうど1995年、円高経済真っただ中の日本ではポケベルが流行っていたころです。ターミナルが沢山あるシカゴ・オヘア空港よりそれぞれの地に向かい、一人でグリーンベイの小さな空港にたどり着いた頃にはすでに夜遅くなっていました。そこから一年お世話になるTom&Terryのお家まで車で一時間、真っ黒なカントリーロードをひたすら走って到着。訳も分からず翌朝を迎えたことを今でも鮮明に覚えています。本当に真っ暗な道だったので全く気付きませんでしたが、朝外に出てみると森の中のポツンと一軒家、隣にガソリンスタンドなどはあるものの、緑色以外の全く何もない景色を見た時には「えらいところに来てしまった」という印象でした。間もなく学校も始まり、ちょうど同級生のホストブラザー、Gregがいてくれたことでクラスの選択や放課後のアクティビティなどがなんだかんだ順調に決まっていった感じでした。その頃の日本の高校生はパソコンに触れることも少なく、ちょうど発売されたWindows95がすでにお家にあったことのすごさを知ったのはもっともっと後のこと。私自身の英語力もそれほどではなかったこともあり、毎日よくわからないままどんどん進んでいきながらも、目で見て肌で感じて盛りだくさん過ぎる一年間を過ごさせて頂きました。

 そんなIF留学の切符を得るきっかけは、京都にある英語塾の先生より声をかけて頂いたことが始まりでした。大半の皆さんが自分の強い意志のもと、このチャレンジをという感じだと思いますが、正直、私の場合は本当にながれです。まだその頃は自分の将来について、また願望などがきっちりと定まっていないときでしたから、居心地のよい環境をわざわざ出てまでという思いも多少はあったなかでの出発だったかもしれません。残念ながら私たちが留学中の96年にその機会を与えてくださった先生はお亡くなりになり、直接感謝の言葉をお伝え出来なかったのですが、たったの1年ではあったものの、本当にすばらしい経験をさせて頂けたと強く感じます。

 実はつい先日、久々の上京予定もあり懐かしのニューステイトメナーを訪ねさせて頂きました。自分の子供たちが成長してきたなかで、なんとなく現在のIF留学の様子を伺おうと思っての訪問でしたが、50名単位で旅立っていた私たちの時代に比べて人数は減ったものの、それでも沢山のメンバーが今日もこの貴重な交換留学を経験できる状況にあることはとても有難いことだなと感じました。この留学制度の意義はリアルにあります。グローバルな社会となり、英語そのものに触れる機会は日本の国内でも十分にあると思います。しかし、コロナ禍を経て、リアルで経験するすばらしさは行った人しか解りません。IFでの留学制度はとてもオーソドックスなものですが、だからこそ知れるリアルなアメリカは意外にも保守的な部分があり、彼らにとってとても大切な歴史と文化があります。日本人と通じるものの考え方などもあると思います。その後、私は社会人となりシカゴの会社で1年、またその後も10年近くアメリカの会社に関係する仕事をしてきました。そしてその後もまた10年、中国・アジア圏でも仕事をする機会がありましたが、すべての原点はこのIF留学で経験した1年にあると言えます。たとえスタートはながれであったとしても、それをチャンスととらえ、沢山のリアルな経験をする。またそこで沢山の人に会い、色々な考えを学び、自分なりの判断基準をしっかり作っていく。いずれ自分のなかでのぶれない自分ができるまで、五感を研ぎ澄ませリアルを満喫してください。

 最後に、2018年初めて家族で里帰りができました。シカゴに住んでいたころなどちょくちょく会う関係は続いていましたが、それぞれが結婚をして子供ができてからはみんなで初めて集合。それぞれのホストブラザーの子供たちもあわせて8名の孫に囲まれてすっかりおじいちゃん・おばあちゃんのTom&Terry。ちょっと早めの留学体験を子供たちにも経験してもらえました。長いようで短い1年の留学、ぜひ永く続く関係性を目指してみてください。噛めば噛むほど奥深い良い味が出てきますよ。

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