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2023年4月号より

1990年度生 唯野 容子

県立高崎女子高等学校からカナダ・ブリティッシュ・コロンビア州に留学。慶応義塾大学卒業。
(株)日立ビジネスに勤務、日立制作所への出向等を経て2013年より(株)ミスミグループ本社に勤務。
転職と同時に2年間、二足の草鞋で米国MBAをオンラインで取得。ライブディスカッションなどもありIF留学を思い出す。現在、内部監査室にて海外監査に従事、欧米のみならずアジアも幅広く担当。


Hello と笑顔で無限の可能性! 残りの日々もトライ! トライ! ! トライ! ! !

 今、日本では桜が満開です。皆さんはどのような春を迎えていますか?(ちなみに今朝はWBCで日本優勝です。)留学も後半ですから色々な体験をし、英語も上達したことでしょう。

 私の場合は、折り返し地点を過ぎたころがスランプでした。「もっとできる自分」になれていない苛立ちと不甲斐なさ。ある日、ホストマザーと話しているうちに涙があふれ、しゃくりあげて声が詰まる私に ”How can I help you?” と色々提案してくれました。翌日から毎日、ホストマザーが夕飯を作る約一時間、私がキッチンの椅子に座って本を音読し、わからない単語を説明してもらったり、おかしな発音を直してもらったりするようになりました。ホストマザーにとっては「オーディオブック」を聞くようなもの。本の内容も面白く、コミュニケーションの機会にもなり、一石三鳥。社会人になってから英語の発音を褒めて頂くことが多いのですが、ただ楽しく過ごしていただけのこの体験が、英語の壁なしに行動できる自分を作ってくれたのだと、有難く思います。

 またある時、出張先の米国子会社の人事マネジャーが私のことを認めてとても褒めていたと、人づてに聞いたことがありました。理由の一つが She always smiles. 笑顔の大切さは留学前のオリエンテーションでも言われていましたが、あまり気にはしていませんでした。それが、30年近く経ったビジネスの場で、信頼関係構築に効果を発揮している事に驚き、思い出したのです。ホストマザーが「Yokoは今では写真の時に笑顔ができるのよ!」と冗談交じりに親戚に自慢していたことを。これはほんの一例に過ぎませんが、カナダで一歳年下のホストシスターと一緒に「家族の一員として育ててもらった体験」がなければ、その社会の人々の価値観の根底となっている考えや姿勢を無意識に近いところにまで擦りこみ、自然と体現することはできなかったでしょう。

 もう一つ忘れられない光景があります。ある日の教会で、その時、5歳くらいの孫にお祖母ちゃんが何かを諭していたのですが、そんな小さな子にでさえ、”Does it sound fair enough to you?”と聞いていたのです。相手の考えを尊重し、フェアという価値観がこんなにも小さい時からしっかりと植え付けられている事への衝撃。今、私は機械加工品の製造・販売をグローバルに展開している日本企業に勤務し、グループ会社の内部監査を担当しています。「英語圏」担当なので北米、南米、欧州、アジア各国も担当し、出張先の各国社員と短期間で信頼関係を築き濃密なコミュニケーションを取ることが求められます。そんな中で、いつも、あの時の光景が頭に浮かんでいます。

 文化や価値観が違う中でもフェアであろうとする姿勢、相手を尊重し臨機応変に対応する柔軟さ、そして何より笑顔でHelloと言うこと。逆説的かもしれませんが、Helloから始まった英語学習が、留学や海外での業務経験を経て、またHello に戻って来た感じです。こんなに簡単で、こんなに可能性を秘めた言葉はありません。残りの留学期間も是非、初心を忘れず、”Hello”で新世界への扉・未知なる自分への扉をもっともっと開いて来てください。大丈夫。失敗も含め、全ての経験が必ず未来のあなたをしっかりと支えてくれます。

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