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2022年8月号より

IF日本事務局長(1990年度生) 杉山 尚子

留学のその先へ

 2021年度生が無事に帰国され、ほっとしている。提出された最後のレポートを、一人一人の顔を思い浮かべながら、楽しく読ませていただいた。
 全員それぞれに、様々な出来事があったと思う。決して楽しい事ばかりではなかっただろう。思ってもいなかった事に遭遇し、その度に慌てふためいたりがっかりしたり、時には涙にくれたりを繰り返しながら、異文化を受け入れる事、自分を素直に表現する事に少しずつ慣れていったのだなと想像する。困難に遭遇した時、誰かのせいにしたり、文句を言ったり、他人任せにするのは簡単だが、それでは解決にはならない。問題を直視し、決して逃げることなく、1つ1つ自分で考え、勇気を持って対処していく事でしか乗り越えられないという事を知り、その度に少しずつ心を強くしていった。帰国を前にして、一つの大きな事を成し遂げたという自信に満ち溢れているのが、レポートを通じてよくわかり、改めて2021年度生を頼もしく感じている。
 私がもう一つ、全員のレポートを読み感動している事は、表現の仕方はそれぞれ違えど、全員がホストファミリーや学校の先生、友人たちなどいつも自分の周りにいてくれた人々、日本で支えてくれた両親に感謝し、その気持ちをきちんと言葉にしていることだ。自分のことで精一杯だった日本の普通の高校生が、親元を離れ赤の他人に囲まれて一年を過ごしたことで、孤独を覚え、周りの人を思いやることを学びながら、自分自身を知っていった。「自己の確立」こそが成長の第一歩だと思う。これまでの先輩達がみな口を揃えて「留学が人生の『ターニングポイント』だった」とおっしゃるが、改めてその通りだと思う。
 この最後のレポートには、留学の成果だけでなく反省も書いてもらっている。自分を冷静に客観視し、うまくいった事だけでなく残念ながらやり残した事や後悔している事なども素直に表現できるようになったのも、成長のあかし。100点満点の留学である必要はない。留学プログラムはこれで完了したけれど、留学の成果は今すぐに現れるものだけとは限らない。10代の留学は、過去を思い出して感慨にふけるためのものではなく、これからの将来につながる長い人生への羅針盤であり、留学のその先にある夢を叶えるためのパスポートである、と私は思う。人間は1人では生きられない、弱くちっぽけな存在ではあるけれど、自分を信じ周りを信じて精一杯努力すればどこまでも強くなれることを知った2021年度生達が、これからどこでどんな活躍を見せてくれるのか。とても楽しみだ。何十年後か、それぞれの道に進んだ2021年度生達と、今度は同じIF卒業生として高校留学について語り合えたら嬉しい。皆さんどうか、お元気で。
 

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