>> サイトマップ

2014年08月号より

2004年度生 高 塚 悠 平

(私)学習院高等科よりNebraska州に留学
(私)学習院大学経済学部経営学科卒業(在学中に1年間
University of North Carolina at Charlotteに留学)
三菱UFJ信託銀行勤務

IF留学がもたらしてくれたもの

 IFの留学の為、成田を出発したのは今から10年前。不安や緊張なんかより、楽しみという気持ちの方が断然勝っていた。恥ずかしながら「憧れのアメリカでの生活がこれからできるんだ!バスケットボールを現地の人と早くしたい!!」くらいにしか考えていなかったと思う(笑)。
 この様な根っからのポジティブ(言い換えれば能天気)の私でも、やはり異国の地では苦労だらけだった。現地の空港に到着するやいなや、ホストファミリーから全く聴き取ることのできない“マシンガントーク”の洗礼を受けた。唯一聞き取れた「Are you hungry?」という問いに、自信たっぷりに「Yes!」と答えたことを今でも鮮明に覚えている。当然授業についていくのも大変だった。英語の授業には特に手を焼いたが、ホストマムに教科書の内容を要約してもらい、口頭で教えてもらうという“裏技”を習得してからは、なんとかこなせるようになった。(ちなみにこの“裏技”はホストマムに「Yuheiと英語の勉強を一緒にしたことは最高の思い出」と言ってもらえる最高のコミュニケーションツールになっていたことを帰国後知った)
 私が10ヶ月間に渡って留学生活を送ったのは、ネブラスカ州の“ゴードン”という、インターネット検索しても得られる情報は皆無の田舎町。そんな誰にも知られていない町に、もう1つの家族がいるのは何だかとても誇らしい。高塚家にとってゴードンは第2の故郷であり、ホストファミリーは私(長男)を含めた3兄弟がお世話になった第2の家族だ。家族5人でホストファミリーを訪れたことだってあるし、個人的にも何回ゴードンに“帰った”か分からない。
 この様に振り返っていると、留学中のエピソードを書きたい衝動に駆られる(披露したい思い出ばかり…!)が、そこは現役の留学生に主役を譲ることとして、ここではIF留学がもたらしてくれるもの、について記載したい。IFの諸先輩方が述べられている様に、このIF留学は人生に大きな影響を与えるものになることは間違いない。
 ちなみに私はIFでの留学を経て「日本に貢献したい」と考えるようになった。例えばチップという文化。高校生ながらに「チップは貰えないにも拘らず、日本人のサービスの方が絶対優れているはずだ。」と感じた。そういった素直な想いから、「世界大国アメリカにも負けない部分が多くある日本なのに、暗い話題が多いのは悔しい。どんなに僅かでもいいから、日本の為になる様な人間になりたい」という考えになっていった(現在もその様な人間になれるよう、日々精進中・・・)。国内大学への進学、大学在学中の留学、就職、あらゆるステージでの決断の軸はこの考えが根底にあったし、これからもきっとそうだと思う。
 「英語が話せる様になりたい」。この単純な理由で留学を決断したが、このわずか10ヶ月間が人生の指針になるとは想像もしなかった。
 ここで強調したいのが、IF留学が精神面や考え方において大きな成長を促してくれた、という点である。他のIF留学生の記述を見てもそれは明らかだと感じる。是非、他のIF生の現在にIF留学がどう影響を及ぼしているのかもご覧頂きたい。「世界公用語である英語の習得」と同等、またはそれ以上に価値がある「自分を形成する軸の発見」ができる可能性を大いに秘めているのがIFでの留学ではないだろうか。
 数年前のオリエンテーション(出国を控えたIF生への勉強合宿なるもの)における、大先輩のスピーチが非常に印象的だった。「私は今となってはほとんど英語を話せないです。でも全く後悔していません。なぜならIFでの留学が無ければ、今の私は存在していないからです。留学したのは何年も前の事ですが、その経験があって今の私があります。だから本当にIF留学という貴重な機会を与えてくれた方へ心から感謝しています。皆さんもそんな素敵な留学生活を是非送って頂きたいと思います」
もしかすると留学を直前に控えた学生の方々には伝わりづらかったかもしれないが、留学を経験した方なら大いに納得できる内容だと思う。
 少し補足させて頂きたい。個人的に興味深いのが、弟2人についてだ。それまで何かと兄貴である私の真似ばかりが多かった彼らが、IF留学後はそれぞれ全く違う進路を歩んでいる。それも同じ町、同じホストファミリーの下で、同じ期間の留学生活を送ったにも拘らずである。IFでは良く「十人十色」という言葉を使うが、まさにその通り。つくづくこの10ヶ月間はどういう影響を与えるか分からないものだ、と感じる。
 大学での留学も経験したが、「高校で留学をして良かった」と強く感じた。それは、大学留学が初めての留学になると勉学最優先になってしまい、上記の様な精神面での貴重な経験はなかなか出来なかったのではないか、と感じたからである。 私はIF留学があったからこそ、語学面での苦労が少なかったことはもちろん、異国の人々とのコミュニケーションにも抵抗なく溶け込むことができたように思う。
 これから留学に行かれる方は思い切り現地の空気に浸かって頂きたいし、留学を検討している方は、高校での留学がもたらす可能性を信じて是非決断してみて頂きたい。きっと想像を遥かに越えた変化を自分に与えてくれるはずである。
 皆様の10ヶ月間が人生において貴重なものになるよう、心より祈念致しております。

△上へ戻る