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2010年01月号より

1978年度生 山田理恵

宮城県第二女子高等学校よりMinnesota州に留学
(国)東北大学農学部食糧化学科卒業
日本分光株式会社勤務
科学技術振興事業団(JST) 創造科学技術推進事業 研究員
東北大学より農学博士号授与
東北電子産業株式会社 代表取締役社長

ミネソタ州のはずれの小さな空港に夜10時過ぎに小さな飛行機から降り立った時、空港の待合室にDad、Momと二人のhost sisterが立って待っていたのを今でも鮮明に覚えています。今からもう31年も前の事なのにセピア色の想い出達の中でアメリカに留学していた1年はオールカラーで記憶に残っています。私はIFの1978年度生としてミネソタ州に留学しました。DadとMomと二人のほぼ同じ歳のsister、そしてたくさんの牛と豚。隣の家まで車で行くような大草原の小さな家状態。最初は人混みが恋しいと思いましたが、そのうち広大な自然が心地良くなり、帰国後はアメリカの家がホームシックに。Drill Teamや音楽のコンテスト、クリスマス、誕生会、プロムなどたくさんの貴重な経験をさせて貰いました。

子供の頃、両親が何人かアメリカの高校生のホームステイを受け入れたことがきっかけで私も高校生になったら留学しようと漠然と考えていました。しかし実際高校に入学し、いざ交換留学の試験を受け合格すると一緒に受験した友人たちは様々な理由で諦め、やはり1年休学してまで高校留学するというのは大変なことなのだと改めて実感しました。何しろ30年前はインターネットも無くメールも無く、手紙を出しても1週間掛かります。両親にとってはそれはそれは大きな決断だったのではないかと思います。しかし当の本人はあまり深く考えず、新しい生活に驚き、感嘆し、五感全てを使って相手の言っていることを把握しようと英語と格闘していたため、あまり手紙も書かずに、毎日の生活をenjoyしていたように思います。しかし帰国後、母が毎日郵便受けをのぞいていたと聞いて心配を掛けて申し訳ないと同時に遠く離れていても見守ってくれていた両親の愛情に感謝しました。

そんな親の気持ちを、一昨年、娘がIFの2008年度生として留学することとなり、否応なく経験することになりました。成田空港で娘達を見送ってから到着したと連絡が来るまでの約24時間は本当に長い時間でした。一人旅など殆どしたことがない娘がダラス、ミネアポリスで乗り換えが出来るのだろうかとドキドキしながら電話を待ち、無事着いたと聞いた時には本当に安心しました。その後は親の遺伝か娘は一度も電話を掛けては来ず、メールも手紙もたまにしか来ず、という状態でしたが、先方のmomが良く状況をメールで教えてくれたのであまり大きな心配はせずに済みました。

昨年6月に娘はhost sisterと一緒に無事帰国しました。Host sisterは2週間日本に滞在した後帰国しましたが、成田で“Thank you very much for everything!” と言いながら二人で泣きながら抱き合っている姿を見て、娘も一生の宝物をこの留学生活で得たと実感しました。

高校留学は英語の勉強のためだけではありません。むしろいかに自分が今まで多くの人達に支えられて生きてきたのかに気づき、感謝する貴重な時間だと思います。支えてくれている両親、host family、友人、IFスタッフ初め多くの周りの方々。自分一人では何も出来ないけれど多くの人に支えられ、愛されながら生きていることを実感する機会でもあります。高校留学は大学で留学する場合とは全く異なります。特にexchange studentはcultural exchangeというお互いの国の文化交流というmissionを持っています。しかし日本の文化をプレゼンするだけでなく、現地の生活に溶け込み、host familyの家族の一員として生活し、たくさんの友人を作るだけでも十分文化交流になります。留学して半年ほど過ぎた頃、「私はここで何をやっているんだろう」と思ったことがあります。Host familyにも迷惑を掛け、日本の両親にも心配をかけ、学校も私を受け入れてくれてその分の恩返しが出来ているのだろうかと。でもhost momがいつも「あなたは私たちの娘よ」と励ましてくれていました。そのhost familyとは今でもやりとりが続いています。何回か里帰りもし、日本に遊びに来てくれたこともあります。昨年は娘が私のhost mom, sister達とミネソタで会うことも出来ました。Cultural exchange は31年経った今でも続いていて、これも1つの恩返しの形かもしれないと思っています。私もIFの高校留学で一生の宝物を得ることが出来ました。

留学には様々な困難もあります。残念ながらhost changeをする場合もあるでしょう。でも10カ月間、一人で異国の地で生活するということだけでも日本で普通に高校生活を送っているだけでは到底得られない貴重な経験をすることができます。それはこれからの人生で必ずプラスになるものです。2008年度生も皆、逞しくなって帰って来ました。娘も行く前とは違う“自信”の様なものが備わったように感じます。

私は帰国後、理系の研究者の道に進み、今は電子機器製造会社の経営をしています。分析装置を海外へも販売しているため、学会や展示会、大学訪問などで海外へ行く機会があります。最近良く感じるのは「英語」が出来る人はたくさんいるけれども「英語+α」が出来る人は少ないということです。+αは何でもいいのです。たとえば営業、法律、政治、経済、工学、医学、化学など。英語はあくまでも1つのツールです。英語を使って何が出来るのか?がこれからの社会では必要になると思います。 留学を終えて帰って来た人も、今留学生活の真只中の人も、これから行こうと考えている人も将来是非この+αを見つけて下さい。そして留学をサポートしてくれた両親や周りの全ての人に感謝の気持ちを忘れずにこれからの人生を歩んで行って貰いたいと思います。

IF生として、そしてIF生の親として二世代でお世話になりました。IFスタッフの皆様に心より感謝申し上げます。

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