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2020年11月号より

事務局長 杉山尚子



 2020年、世界は新型コロナウィルスの猛威に見舞われた。毎年春休みには、東京の会場に全員集まって行っていた留学前オリエンテーションも、緊急事態宣言を受け6月に延期。アメリカ大使館も3月後半から無期限で閉鎖され、留学ビザが発給されるのかさえわからないという状況であった。2020年度生の皆さんは、今年は留学できるのかと、さぞ不安な毎日を送られたことだろう。IFにとっても、初めての「プログラム存続の危機」であったと思う。
 緊急事態宣言が解除になっても、アメリカ大使館は相変わらずクローズ、8月以降の渡米が許されるのか不明であったが、IF本部の判断はプログラム続行。感染予防に対して細心の注意を払いながら、留学前オリエンテーションを実施した。密を控え時間も短めに、例年より規模はかなり縮小せざるを得なかった。だが当日そこにあったのは、不安な気持ちに負けずに、留学の夢に向かって前のめりになりながら話を聞く2020年度生の力強いまなざし、仕事や勉強の合間をぬって、貴重な休日の時間にかけつけてくれ後輩たちの為に力を貸してくれた先輩たちのはつらつとした姿、全て「いつもどおり」のオリエンテーションだった。留学に対する夢や希望、留学で培われたリーダーシップや人間力、他人を思いやる心、どれもIFの長い歴史によって積み上げられた知識と経験が作り上げたもので、いきなりやって来た新型ウィルスなどには奪えないものばかりだ。
 とはいえ、7月になっても状況は一向に好転の兆しを見せぬままであった。夏を迎え感染の勢いが一時的には落ち着いたとしても、またいつ感染が拡大するかもしれないという状況で、無償で1年間、見ず知らずのアジア人留学生を迎え入れてくれる学校や家庭があるのだろうか…? そんな懸念は、温かくも勇気あるアメリカの方々の善意が打ち砕いてくれた。8月中に全員のホストスクール/ファミリーが決定し、留学許可証(DS2019/I-20)が発行された。ビザも無事発給され、9月半ばまでには全員、ホストファミリーの元へ飛び立った。
 不要不急の用件は極力控えるように言われ、今この時期の留学をどう考えるべきか、誰もが一度は考えたはずだ。よく言われる事だが、誰も絶対的な正解を持ってはいない。自ら判断し決めた事が解であり、自ら出した解には責任を持つことでしか前には進めない。留学中の2020年度生の皆さんは、様々な方の助言を受けつつも、最終的には今年留学することを自分で選んで、今異国の地にいる。その判断が良かったのか悪かったのかなんて、誰にも分からない。今、この瞬間、自分ができる精一杯の事を命がけで行い、結果を一つ一つ積み重ねていって欲しい。それと、言うまでもない事だが、その皆さんの決断を尊重し、見守って支えてくださる日本のご両親、アメリカのホストファミリーや学校がいてくれてこその留学であること。感謝の心を忘れないのはもちろんの事、その気持ちを常に言葉にして伝える心の余裕を持ち続けていて欲しい。皆さんの頑張りに期待している。

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