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2021年2月号より

1990年度生 服部 元輝

1990年に兵庫県立夢野台高校からノースカロライナ州Albemarle High Schoolへ留学。
1992年、Albemarle高校卒業、マサチューセッツ州ボストンにあるバークリー音楽院に入学。バークリー卒業後、Longy School of Musicの大学院へ入学。その間にプログラミングに出会い大学院を中退し、IT会社へ就職。その後ベンチャー企業数社転職し、2009年に帰国。みずほ証券を経て現在外資系報道機関Bloombergにて、Solution Engineerとして活躍中。

先入観がない若い時の経験の大切さ

 皆さんこんにちは。1990年、1991年に留学していました服部元輝(はっとりもとき)と申します。もう30年前にもなる話しなので参考になるか分かりませんが、少しでも私の経験が皆さんのお役に立てばと思います。

 「そんなん無駄や。行くな。」と担任に言われた留学

 私の日本の高校時代は1年ちょっとという短い間でしたが、窮屈で嫌な思いばかりでした。友達には恵まれましたが、先生達にはロン毛のせいで目の敵にされ、進学校であったせいか「勉強だけが人間性を語るツール」みたいな文化がとても嫌でした。そこで、半分そんな生活から逃げ出したいのと、半分アメリカかぶれだったのもあり、留学したいと思いました。そして、留学試験を受ける旨を担任に報告すると、「お前が何出来るんや?そんなん無駄や。行くな。」と言われました。日本の教員はやはり教育の世界しかみてないからでしょうか?「こんな狭い考え方してるんだ。」と開いた口が塞がりませんでした。そんな担任の意見は他所に粛々と試験の準備をし、何とか受からせてもらいました。
 その後、ノースカロライナ州で留学させていただき、ホストファミリーもとても優しい方々で、5歳と7歳のヤンチャな子供たちにてんてこまいになりながらも、楽しく有意義な2年を過ごさせていただきました。勿論言語の壁の苦労は皆さんと同じく毎日ありましたが、何とか高校も卒業出来、ボストンの音楽大学にも進学させていただき、晴れてあの嫌いだった日本の高校を中退出来ました。今自分が進んでいるキャリアも非常に満足しているもので、これは留学なしでは絶対に成し遂げられてなかったでしょう。「あの担任の言うことを素直に聞いてたら…」と思うとゾッとします。因みにホストファミリーとは今でも付き合いがあり、頻繁にメッセージを送ったりしています。

 「先入観がない若い時の経験の大切さ」

 今日1月21日、ちょうど米国大統領の就任式がありました。何事もなく無事終えましたが、米国の分断はまだまだ深刻そうです。オバマ政権のころからふつふつと一部で溜まった不満がトランプ政権になってから一気に爆発し、ここ4年間は私も今までみた事のないアメリカに変わっていきました。テレビに映っている光景だけでなく、ホストファミリーや友人達においてもです。
 私が高校留学したノースカロライナ州のある南部は保守系の共和党の強い地域であり、大学・社会人を過ごしたボストン含む米国東北部は逆にリベラル系の民主党の強い地域です。今の状況はお互いにレッテルを貼る風潮が非常に強く、民主党支持者は共和党支持者を「レイシストだ!」などとすぐ決めつけ、共和党支持者は民主党支持者を「売国奴だ!」などと「もう救えないんじゃないか?」と思ってしまうくらいの分断を感じます。
 自分が政治観を確立し始めたのはボストンにいた時なので、自然と民主党寄りになりましたが、ホストファミリーは皆共和党支持者です。しかし、私を無償で自分の息子として育ててくれたファミリーなので、私には彼らをレイシストなんて全く思えませんし、彼らは彼らのプライオリティーと住んでいる地域が違うだけなのでそういう政治選択になっているだけなのです。そんな優しい人たちなのに、自分が支持しているはずの民主党支持者が彼らのことを簡単にレイシストと呼んだりするのが非常に悲しいです。
 しかし、私がこうやって政治的に反対意見の者でも大切にしたい気持ちは、若い時に何の先入観をもたずに行った留学のおかげです。もし、大人になってから政治観が確立された状態でノースカロライナに行っていたならば、今みたいな柔軟な考えになっていなかったと思います。政治は生活に必要なことですが、時にそれを取り払って腹を割って付き合うと上手くいくものです。先入観のない若い時はそれが一番しやすい時だと思いますので、皆さん、今を大切に過ごし、これから先も色んな世界を経験していってください。

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