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2023年5月号より

IF日本事務局長(1990年度生) 杉山 尚子

人事天命

 Time flies. (光陰矢の如し。) あっという間に2022年度生の帰国の時期である。この冊子を日本で手に取っている人もいるだろう。それぞれの思いは様々だと思うが、良かった事やそうでないと思った事、とにかく沢山の経験をし、これまでで最も濃厚な時間を過ごしたことは確かだと思う。昨年の今頃、事務局スタッフからの注意事項や、先輩が聞かせてくれる体験談から想像を膨らませ、思い描いていた留学生活と、実際に自分の目で見、耳で聞き、肌で感じた本当の留学生活、何が一緒で何が違っていただろうか。
 私がIF交換留学で学んだ事は数えきれないけれど、今も心に一番残っているのは、「実際に自分が体験してみないと、本当の事は分からない」ということ。オリエンテーションで一生懸命メモした先輩の話や、テレビドラマ・映画、本での情報を基に、日本にいる頃から「異文化生活」について念入りにシミュレーションしていた私が、留学初日に目にしたのは、靴を脱いで家に入り、夕食で白米を食べるホストファミリーの日常だった。最初から想定が全て崩れて愕然としたのを今でも覚えている。学校でもそれ以外の場所でも、思っていたのと全然違う、のオンパレードだった。だが、高校生の素晴らしいところは、自分の経験や世間の常識で凝り固まった大人と違い、柔軟性に富んでいることだと思う。すぐに新しい環境に慣れる事ができ、違いを受け入れる事ができる。2022年度生たちも、思い描いていた理想と現実のギャップに初めのうちは苦しみながらも、徐々に受け入れ慣れていき、自分の居場所を確立して今日を迎えていることだろう。無我夢中の1年だったと思うが、この経験はきっと、これからの長い人生で様々な岐路に立った時、解決するための自信につながってくることは間違いない。
今年も、春休み恒例の留学オリエンテーションが、出発を控えた2023年度生に向け実施された。忙しい仕事や学校の合間を縫って、後輩の為に一肌脱ごうと集まってくださった先輩達には、いつものことながら感謝に堪えない。2023年度生は、ここで得た知識を大切にするのはもちろんの事、例え聞いていた話とは違う事態に陥っても、落ち着いて柔軟に対応できるよう、リラックスすることも忘れないでいてほしい。全てにおいて「絶対こうである」ということはないし、例外といつも隣り合わせであること、150%の準備をいつも怠らずにいれば、想定外の事が来ても大丈夫だ。「人事を尽くして天命を待つ」。2022年度生、2023年度生のこれからに、幸あれ。 
 

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