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2010年4月号より

1981年度生 吉田直樹

大阪府立茨木高等学校よりIowa州に留学
国際基督教大学教養学部卒業、教養学士(BA)
INSEAD卒業、経営学修士(MBA)
株式会社オルタレゴコンサルティング 代表取締役社長
株式会社メディエイド 取締役会長
株式会社クオン 取締役会長

皆さん、はじめまして。IF81年度卒業生の吉田直樹と申します。しばしお付き合いいただければと思います。
IF の留学。私にとってはもう30年も前のことです。ただ、この30年前の一年間は、私自身の人生を大きく変えてくれた一年間でした。IFの留学がなければ、全く違う人生を歩んでいたことと思います。
大阪の普通の進学校に通っていた私は、普通なら、地元の国立大学に行き、地元の企業に就職していたはずが、IFの留学によって大きく人生の方向が変わりました。
IFの留学から帰ったあと、当時の事務局長の井上清子さんのアドバイスと諸先輩の影響で、留学前には思ってもいなかった進学先(ICU)を選びました。ICUでは、3年と4年の時に、IFの多くの諸先輩と同じように日米学生会議(JASC)に参加し、また実行委員として企画にあたり、今もその交流が続いています。ICUでは、経営学の鈴木教授(現ICU学長)との運命的な出会いがあり、アメリカで約4年間の勤務をし、INSEADというフランスでの留学を果たし、MBA(経営学修士)を得ることになりました。尤も、このフランスの留学でさえ、今年は15周年を迎え、MBAの学生の選考委員としても10数年を重ねていますから、ずいぶん昔の話になってしまいましたが。今は、起業した三つの会社の経営と、約5年間務めた上場企業の社長業の後の構想を練っているところです。
あまり過去を振り返らないのが私の信条ですので、諸先輩の巻頭言とは少し異なるかもしれませんが、しばしお付き合いいただければ幸いです。

高校での留学は、私のころはまだ周りの理解のない時代で、留学時のアメリカでの単位は一切日本の高校では認められませんでした。一方、アメリカでは、日本での高校の単位も全て認めてくれて、アメリカの高校を卒業することもできました。おまけに、高校での単位も取り終えてしまったため、大学の単位を通信教育により2科目取ることが出来るなど、アメリカと日本のギャップを十分に感じた一年でした。
この留学を実現させてくれたのが、IFとホストファミリーでした。
長年、IFの日本の事務局長を務められた井上清子さんは、IFの創立者であるミルドレッド・ブラウン夫人の薫陶を受けられ、ご自身の時間も、ご自宅も、IFのために開放され、IF生のために、文字通り人生の長い時間を捧げてくださいました。夜中にかかってくる留学生からの泣き言。ビザ(I-20)を全員が取得するために東奔西走。帰国した学生には、進路の指導。東京に来た学生の何人が、井上宅(そこには懐かしい故井上清先生がいつもいらっしゃいました)で、井上さんの手料理を振舞われたことでしょう
一方、たどたどしい英語で、ほとんどコミュニケーションの取れない日本人の学生を、心優しく影に陽に支えてくれたホストファミリー。ティーンエージャーというもっとも厄介な学生を一年近くも家族として接してくれたホストファミリー。
IFの事務局もホストファミリーも、自分にはとても務めることは出来ないな、というのが正直な感想です。ビジネスマンとしてはなんとかやってきた私ですが、IFの事務局の仕事をしたり、見知らぬティーンエージャーを一年家族として預かるなんて・・・考えただけでも、如何に自分の仕事が楽かと思い知らされます。そういうわけで、私が一生頭に上がらないのは、IFの事務局とホストファミリーです。
ヴォランティアという言葉を始めて知ったのは、IFを通じてでした。ヴォランティアというのは、最も難しい事業であると思います。ビジネスには、最終的には経済的な合理性が求められ、その合理性があれば継続され、その合理性がなければ、JALのように継続が否定されるのです。そこには明確なルールがあります。一方、ヴォランティアには、そのような明確なルールはありません。もう少し正確に言えば、そのような「浅薄なルール」はありません、ということなのだと思います。
どれだけ儲けたかとか、数字で測れるとか、そういう浅薄なことではないのです。
企業も本来は同じです。企業に本来求められるのは社会性です。社会に貢献できたからこそ、その褒賞としてその対価を得ていたのが本来の企業の行為でした。その証拠に、企業の創立者は、財を成した後、東西を問わず、企業の更なる発展から一線を引き社会に貢献をしたものでした。21世紀になって、かつてとは異なる尺度で企業活動が測られるようになっていることは残念の一言です。
そのような時代(儲けることが一番)にあって、IFが今も続いていることは、奇跡に近い、のではなく、奇跡です。
自分自身もそうでしたが、ティーンエージャーとは、一番厄介な時代です。私のようなものからすれば、もう理解の範疇を超えています。そして、出来れば、関わりたくない・・・というのが、大半の大人の本当の気持ちなのではないでしょうか。(ごめんなさい!)
ただ、ティーンエージャーは、人生で一番輝いている時代でもあります。豊かな感性。溢れるばかりの創造力。
このアンビバレントな世代に、真正面で向かってくれるのが、IFの事務局とホストファミリーなのです。その精神を、私は、ヴォランティアという言葉なしに説明することは出来ません。そこには、儲かるとか儲からないとかいう、人類の歴史にとって極めて最近の尺度の入り込む余地は全くありません。
そこにあるものは、人間にとって極めて根源的な感情です。自分のものを他人と分かち合いたいという善意であったり、弱いものに対する慈しみであったり、自分とは異なる価値観を受け入れるという寛容であったり。

IFで留学を考えている皆さん、そして今、IFで留学をしている皆さん。
小難しいことは考えず、毎日を過ごして下さい。あなたの青春を、誰も奪うことは出来ません。他の人の青春を誰も奪うことが出来ないように。人生において最も輝いているこの時期を楽しんでください。ただ、あなたのこの青春は、たくさんの人の善意や慈しみや寛容によって成り立っていることを理解していただければと思います。
いつか、私のようにおっさん(或いはオバハン)になったとき、IFの事務局やホストファミリーのすばらしさを思い出し、出来れば、同じような貢献が出来るような大人を目指してもらえば、と思います。それは、一番素敵な姿なんだなと思います。

最後に軽い話題を。私の最近のホストファミリーとの付き合い方です。携帯もインターネットもなかった80年代ですが、今、当時のホストファミリーとはFacebookで繋がっています。ホストシスターは、すっかりお母さんになって、アメリカの大自然の中を、だんなさんと子供たちと駆け回っています。30年前も人の世話を焼くのが好きでしたが、Facebookでも全く変わらず、しばしば苦笑しています。
この続き、もし興味があれば、Facebookで、私をlook upしてください。

それでは、留学中の皆さん、だんだん時間が限られて来ていると思いますが、がんばってください!そして、留学を考えている皆さん、是非、行動に移してください!

The world without action is just an idea. (行動なき世界は概念に過ぎない。)

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