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2022年4月号より

2013年度生 宮崎 弦

私立学習院高等科からアイオワ州へ留学
早稲田大学国際教養学部卒業
キリンビール株式会社勤務

私の軸となった留学

 留学中、心の拠り所としていたNEWSLETTERの巻頭言を書くことができるということで、とても光栄な機会をいただきありがとうございます。私の留学経験や留学がその後の私の人生に与えている影響について、何か1つでも皆さんに刺さるものがあれば、幸甚です。
 私が留学を志望した理由は、もともと英語が好きだったため、「自分の英語が本場アメリカでどのくらい通用するのか試してみたい」と感じていたからでした。これは表向きな理由で、実際のところ、中高一貫校に通っていた私は毎日の生活に少し飽き飽きしてしまっていて、何か環境を変えてみたいと感じていたこともありました。新しい生活への希望とちょっとの不安を抱きながら成田空港から最寄りの空港に到着し、空港から家までの道の風景がずっとトウモロコシ畑で、「ああ、もうここは東京じゃないんだ、とても遠いところに来てしまったな」と思ったことは今でも鮮明に覚えています。
 留学中はいろいろな思い出があります。想像の5倍速いアメリカ人の英語に圧倒され、毎日の授業について行くのに必死だった留学初期、引っ込み思案で友達作りに苦戦したこと、当時8歳のホストシスターのスパルタ英会話特訓、友達作りのために未経験の吹奏楽部に入りコンサートに向けて練習したこと、未経験のサッカー部に入り最高の思い出を作れたこと、近所の大学のインターナショナルフェスティバルで剣道の演武をしたこと、近所のみんなでキャンプファイヤーをしながら星を眺めたこと、たくさんの出来事がありました。楽しかったことよりつらかったことの方が多かったかもしれません。ただ、一つだけ言えるのは、高校留学に行くことができて本当に良かったということです。
 留学を振り返ってみると、大きく2つの収穫があったと思います。まず1つ目は、どんな困難も自分で切り開いていけるという自信です。留学中は様々な壁にぶち当たることや思い通りにならないことが多々あると思います。英語が思ったより伝わらない・理解できない、友達が出来ない、ホストファミリーとうまくいかない、など人によってはそれぞれですが、きっと全てが順風満帆に行く留学生活はおそらくないでしょう。そんな逆境の中で、頼れる人は自分だけ。自分がアクションを取らなければ何も変わらないという環境こそが高校留学の醍醐味です。自分で逆境を乗り越えることができれば、自分への自信に必ず繋がると私は断言できます。私自身、その後の人生の中でも辛いことや大変な局面にあった際には、「自分はあの高校留学を乗り越えられたのだから、大丈夫、何とかなる」という気持ちが自分の根底にあり、乗り越えられています。それが自分の頑張る原動力になっています。
 2つ目は自分や日本を外から客観的に考える機会を得られたことです。高校生という大学の進路や将来を考える時期に、一度今までいたコミュニティから出て、自分自身と向き合う時間を持てたことはとても有意義な時間でした。また、日本を出て異国へ留学することで、外から見た日本を再認識することもできました。海外に出ると「日本人代表」として見られ、日本の宗教・政治・歴史・文化などについて質問攻めにあうため、自分は日本人なんだというアイデンティティを強く感じると同時に、日本について再度勉強するきっかけにもなりました。特に私の場合はホストファーザーが牧師、現地校はクリスチャンスクールに通っていたため、宗教について意見を求められることや考えることが多かったことは、今まで宗教に無頓着だった私にとって非常に貴重な経験となりました。
 私は、留学を通じて日本人としてのアイデンティティを感じた影響から、将来は日本の政界におけるプレゼンスの向上に貢献したい・貢献できる人材を育てたいという思いを持ち、まずそのために必要だと思った日本の英語教育に興味を持ちました。大学では英語教育や言語習得論について学び、教育先進国のフィンランドへの留学も経験しました。そしてまず自分が日本の存在感を高める仕事をしたいという思いを持ち、メーカーへ就職し現在働いています。高校留学以降の大学受験や留学、社会人生活に至るまで、すべての意思決定の根底には、高校留学の経験がありました。このように自分にしたいことを明確にし、目標に向かって努力して来ることができたのは、留学中に自分自身としっかりと向き合うことができたこと、それだけ私にとって高校の留学は人生のターニングポイントだったと断言できます。
 最後に皆さんにお伝えしたいのは、決して他人の留学と比較しないで欲しいということです。留学は十人十色であり、誰一人として同じ経験を詰むことはできません。隣の芝生は青く見えるのは私も経験した身としてよく分かるのですが、ぜひ目の前の「自分の留学」に全力を尽くしてください。留学の経験をただの北米で過ごした1年とせず、今後の将来に繋げる経験にできるかは自分次第です。私自身の考えとしては、「自分自身と目の前の課題から逃げずに向き合い続けたか」という点が決め手であると思います。どうすれば留学を終えた時に「行ってよかった」と思えるのか、ぜひ日々考えながら残りわずかな生活を過ごしていただければと思います。日本から応援しています!

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